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社寺建設の指南書

予算・お金の話

予算・お金の話

予算の作成

予算計画を立てる

どれだけの事業に、どれだけの予算が必要なのかは専門家でない限り、なかなか判らないのが通常です。建てたい建物や、構造や仕様によっても大きく変わってきます。また地域差もあります。

そのため一般的には、過去に普請をしたことがある知り合いのお寺の意見を聞いたり、社寺建築経験のある工務店や設計事務所等の専門家の意見を参考にして予算を組むことが行われます。

まずは、先に申し上げましたお寺の事業計画書を見返しながら、何をしたいのか、何をすべきなのかを考え、どれくらいのお金が集まるのかを試算し、おおまかな予算組をしておきましょう。御住職がまず大枠を考えて総代の意見を仰ぎながら、ざっくりとした予算を考えていきます。このタイミングは建設委員会が組織される前がよろしいかと思います。

計画にもよりますが、建設にかかる費用意外にも見落としがちな費用がありますので、参考に上げておきます。計画に応じて検討しましょう。

予算計画書の一例

計画運営費会合費、見学費、交通費や飲食費、記録費、工務店や設計事務所の選定費等。どれくらいの期間をかけるのかでも変わってきますが、概ね30万~100万。
設計監理費一般的に設計監理費は工事費に対する料率で決まります。2億くらいの工事であれば工事費の5~7%くらいでしょうか。設計事務所によって大きく差があります。伝統構法であれば確認申請の難易度から、別途費用が発生することもあります。
工事費競争見積もりや入札をする場合は別途費用が発生する場合もあります。
仕様やデザインによって大きく変わってきますが、簡単な例をあげておきます。
本堂ですと150~200万/坪、伝統構法や仕様がかなり良いものであれば、200~300万/坪、
書院や客殿で真壁づくりであれば75~90万/坪。大壁のあっさりとしたものであれば65~70万/坪。庫裡も極端にこだわらなければ大体同様の坪単価でできます。
官公庁諸手続費確認申請、開発許可、上下水引込等、官公庁に直接支払う費用です。確認申請には中間検査や完了検査があります。鉄骨やRC造によっても費用が変わってきます。官公庁に支払う費用は木造でだいたい総額で10~15万、鉄骨やRCでは15~20万。構造適合判定という特別な審査を要する場合は別途30万ほどかかります。上下水道の引き込みは地域差がありますが、40~50万ほどかかります。
仏具費修繕や新装する場合。保管する場所が無い場合は保管費。
仏具費は宗派によっても大きく変わります。修繕でも高額になります。須弥檀や宮殿など漆を塗り直したり、金箔を貼り直したりすると1000万以上かかる場合もあります。
法要費地鎮式、上棟式、落慶法要など必要に応じて。規模によっては負担大。
地鎮式の費用負担は少なくすみます。参加者にもよりますが~10万くらいでしょう。
落慶法要、上棟式が特に費用がかかりますが、小規模に抑えれば~数百万、大規模に行えば1000万以上かかると言われています。
記念品、祝儀費落慶の記念品やお祝儀等。
お祝儀は工事関係者への日当程度と考えればいいのですが、役職に応じてある程度の差をつけます。例をあげますと、大工が1万なら棟梁や設計士はその2~3倍となります。
記念品は渡すものに応じて変わってきますが、旧本堂の古材を利用して作る場合が多いです。お寺によって違いますが、だいたい5000円~10000円で納まる物になるかと思います。

この時点で設計事務所が決まっていたりするならば、予算組も親身になって手伝ってくれます。そうでない場合は、総代の方々にお力添えをいただきながら完成させましょう。

昨今は寺院建築費の透明化が図られ、おおまかに概算費用が掴めるようになってきています。本堂だからということで、極端に高額な費用を費やしてきた時代もありましたが、現在は国産の良質な材料を使いながらもリーズナブルに本堂の普請が出来る時代になってきました。

あるお寺の予算組の一例

仕様や大きさによってかなり前後しますが、予算組みの例をあげます。これは6間半四面の本堂に客殿、書院が付属する場合の一例です。

極楽山 幸福寺 本堂客殿書院新築計画

檀家数:300軒

事業計画書へのアドバイスから、マスタープランの作成も兼ねて設計事務所に依頼することで決まる。

設計事務所の選定は複数の設計事務所と接見し、設計コンペをしてはという総代の声もあったが、コンペにかかる時間を待てないという声もあったので人望厚い住職の一存で決めてもらうことに決定。どの設計事務所も実力は同等であるため、住職の年齢にも近く一番気が合いそうだった幸福設計事務所に決定した。

事業計画書の作成アドバイスからマスタープランの作成等をしながら計画を進めていき、さしあたって必要な「本堂客殿書院新築計画」を進める事にする。同時に概算と、工事完了までの工程表も作成してもらう。

予算組をすると合計約2億2200万かかることが判る。
工事費の追加等も考えて2億3千万浄財を集める事に決定。

お寺から4000万拠出し、1檀家あたり50万を1口と決め、少なくとも1口以上として募財集めをする事に決定。

募財集めにおいては地域毎に集金委員を設けて、効率よく寄付金を集めるようにした。負担の無いように10ブロックにわけて、3年がかりで集める事にする。一括納付か5回の分割納付か決めていただき、工事が完成するまでに確実に支払いが出来るように日程調整。
工事期間が契約から約2年と聞いているので、今年から寄付金集めを始めて、2年後くらいに実施設計をまとめてもらうように決定。
寄付金集めにおいては、趣意書を作成し、檀信徒総会を開き報告。参加出来ない檀信徒には郵送にて配布することにする。

計画運営費:費用約80万

  • 総代5名、檀信徒から5名 約半年から1年かけて計画 1ヶ月に2回のペースで会合
  • 設用務所を選定するにあたり会合を開いた費用。
  • 交通環。近隣の院を見学するにあたりバスをチャーターした期
  • 会食費

工事費概算:費用2億 (設計事務所に概算工事費を出してもらう。)

  • 6.5間四面の本堂で約1億
  • 60坪の客殿で約5000万
  • 40坪の書院で約3500万
  • 外構、解体等の付属工事費 約1500万

官公庁への手続き:約15万

設計監理費:費用約1200万

  • 工事費の6%とし、1200万の暫定設計費

法要の費用を知り合いのお寺に聞く。

上棟式費用合計100万
(上棟式に餅投げをすることに決定。)
  • 1升で3万。撒く人を8人に決定。
    約25万。
  • 上棟式参加者会食費
    100人参加×500円=約50万
  • お祝儀 大工10人×1万。
    棟梁×設計士×工務店社長×3万。約20万。
落慶法要費用合計500万
  • 随喜寺院 8名 お礼
  • お稚児行列 参加料5000円。
    衣装レンタルと記念品で差し引き0円
  • 祝賀会100名参加×5000円=約50万
  • 記念品 320個分×5000円=約160万

仏具費:約500万 (仏具の修繕費を出入りの仏具屋に聞く)

  • 須弥檀、天蓋、ヨウラクの修繕費に約500万はかかるとのこと。

以上のような流れで幸福寺様は予算組みをし、募財集めにとりかかりました。ここまでの流れも文章にすると単純そうですが、苦労の連続であったと思います。

お寺の事業に前向きな檀信徒の方々がおみえですと、比較的楽に進むかと思いますが、そうではなく、何とか計画を覆そうという考え方の人が多いと苦労されることでしょう。何年経過してもまとまりません。そういう時は、事業計画書を見せ、お寺が生き残るためにはこの計画がどうしても必要だと言う事を話し合う場面も必要になります。
檀家であるかぎり、みなさんお寺のことは心配であります。ただ、手順が気に入らないという事もあります。
意見を集約し、何が解決の糸口なのかをつぶさに探り、一歩一歩前進するしかありません。

今まで色々な例を見てきました。檀信徒同士がいがみあう事もあったり、怪文書が流れたり、誹謗中傷もありました。しかし、計画を成し遂げるんだという強い意志があれば、最終的にはみんなまとまっていきます。それには、御住職の熱意と、総代会、建設委員会の協力体制が欠かせません。

Writer

起雲社寺建築設計 代表

野村 健太

社寺設計において伝統的な日本の建築様式や文化に詳しく、現代のニーズにも応えた美しく機能的な設計を手がけています。社寺設計における専門的な知識や経験を活かし、計画から工事、式典まで一貫して社寺建築業界をサポートします。

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