設計士の役割
建物を建てるには図面が必要です。お寺にはそこまで詳しい図面は必要ないと思われるかもしれませんが、複雑な法手続きを行わなければならないですし、工法においても解答が一つではなかったりと、建築をする環境が時代とともにより複雑になっており、それをとりまとめるためには設計士がどうしても必要だという場面が多々あります。
また、お寺というのは住職 一人だけのためにあるのではなく、檀信徒のためにあるものと考えますと、計画を皆さんに提示しなければいけませんし、公平に工事会社を選定する必要があります。そのため、公平性を満たすための基本となる図面が必要になるのです。そういうお手伝いをするのが設計士になります。建設委員会や檀信徒総会等でも皆さんが納得できるように設計計画を説明しなければなりませんし、より判り易くするために模型を作ったりパースをつくったりと、プレゼンテーションをするために手を尽くします。
工事をする人達の仕事は、実際に形が出来てきますので何をしているのかをイメージしやすいのですが、われわれ設計士は何をしているのかなかなか御理解いただけません。簡単に説明すると私達は良い建物をスムーズに作るために陰で働くのが設計士の役割であり、具体的になっていない夢を、具体的に描く役割が設計士の役割になるのです。
設計士の仕事
建物が完成するまでの設計士の仕事を簡単に説明してみましょう。
- 境内地を確認する。
- 現況図面を作成する。
- 事業計画を確認する。
- ヒアリングする。
- マスタープランを作る。
- ヒアリングをする。予算の確認。
- ヒアリング内容を図面化する。 (基本設計)
- 基本設計が固まるまで何度も練り直す。
- 基本設計が出来るまでには模型の作成やパースの作成。完成形がイメージしやすいように努めます。
- 法規チェックを行います。
- 実施設計。基本設計を元に詳細な設計を行います。使う材料や工法、性能や仕様等、実際に建てられる建物の細かい部分まで図面化していきます。このように全てを図面化することで、複数の建設会社に見積もりを出して基準となる図面があるため公平な見積もりをとることが可能となります。
- 概算の把握。基本設計、実施設計の段階で予算内に納まるよう設計コントロールをします。
- 工事会社に見積もりを出します。工事会社を選ぶには、特命、見積もり合わせ、競争見積もり、入札、等の方法があります。
- 見積もり内容を確認します。適正な見積もり金額なのかを見定めます。
- 複数社から見積もりをとった場合は、どこの工事会社にするかを決める資料作りをします。
- 工事会社が決まったら法手続きとして確認申請を出します。
ここまでが設計業務の流れになります。
工事が始まると監理業務が始まります。
- 工事の進行に伴い図面通りに工事が進んでいるか監理をします。
- 隔週、もしくは2週間に一度のペースで定例会議を行います。より細かい要望をくみ取りながら、議題に基づいて工事を進めていきます。工事を進める途中で出てきた問題点や、お寺に決めてもらいたい事、工事の工程確認等、色々な諸問題を解決しながら工事を進めていきます。
- 法手続 中間検査、完了検査を行います。
- 完成時には検査を行い不具合の是正も行います。
- 工事中は工事の記録写真をとり、変更事項等は図面化します。
以上が設計事務所の仕事になります。
仕事量としては膨大ですし、設計士が描いた図面を元に工事が進んでいきますので責任は重いです。流れを見ていただいた通り、工務店を信用していればそこまでいらないだろうという事もあります。過剰すぎる面もあります。そうまでしなくても工事は進んでいきます。しかし第三者の立場で振る舞ってくれる設計士をちゃんとたてれば便利であることは間違いありません。 工務店で解決できる問題。設計士がいなければ解決できない問題。工事にも色々あります。どんな工事にも必ず設計が必要だということを頭に入れていただき、より親身になってお寺の計画に専門家として携わってもらいたいと思えば設計士をたてると良いでしょう。そしてより良き工務店を公平な観点で選んでいければ檀信徒に恥ずかしくない、理想の建物が出来る事でしょう。
設計事務所にも色々なタイプがあります。お寺に合った良きパートナーを得られればきっとお役に立てると思います。